オフィス:工学部10号館2階231号室
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2007年5月現在
(進化コンピュータなど最新情報は上記のURLでご覧ください)
学歴
専門は情報学ですが,学生時代に情報と名のつく学科は京大になかったので,1972年に京都大学工学部電子工学科を卒業,1977年に大学院工学研究科博士課程電気工学第二専攻を出て,京都大学工学博士になりました.学生時代の所属は電気系でしたが,修士課程の時からずっと当時の情報工学科の建物にいました.
職歴
昭和52年4月に京都大学助手(情報工学教室)になり,現在,准教授(大学院情報学研究科)です.
学会活動
ニューヨーク科学アカデミー 会員
情報文化学会 理事 近畿支部長
関西ベンチャー学会 理事
その他にも,電子情報通信学会,国際教育学会等に所属しています.情報処理学会は,学会誌の程度が極端に下がったため,さすがに数年前に脱退しました.
学外活動
中央省庁・地方自治体の委員等を歴任してきました.
現在も関西文化学術研究都市の学術委員です.これは学研都市の将来構想を考える実働部隊です.まわりは長のつく人が多いです.
コンピュータ教育の大学教科書はこれまで4冊発行しました.1990年代後半に発行した教科書2冊は,いずれも10刷を超えて,多くの大学で採用いただきました.2006年に発行した教科書も,1年ですでに3刷がかかっています.
また、マスコミ関係でも、産経新聞では2000年に1年間のエッセイを毎週連載、2006年には日刊スポーツ紙で数学コラムを1年間毎週連載、2006年にBIG tomorrow誌でゲーム理論の応用を毎月連載し、啓蒙活動にも力を注いでいます。
受賞等
1984年に Pattern Recognition という学術雑誌で発表した論文は,1986年に同
Society からベストペーパーの一つとして論文表彰を受けています.新聞紙面のパターン認識を行う並列処理コンピュータに関するものですが,複雑系における「超指数法則」の初出で,しかも技術革新も同じ法則に従う可能性を指摘しています.
ペンネーム逢沢明で最初に発表した『コンピューター社会が崩壊する日』(光文社カッパ・サイエンス,1990年)は,京都府から優良図書表彰を受けました.
研究テーマ
私の研究テーマには,「複雑系」と「情報文明学」の2系統に分類されるものがあります.ただし私の頭の中では,どちらも「ネットワーク理論」の枠組みで考えていて,「情報とは何か」という最も基本的な問題から生まれてきた理論体系です.
概要をコンパクトにまとめた文章では,AERAムック『情報学がわかる。』(1998年9月)をご覧ください.ペンネームのものです.ペンネームで書いたものは,一般の方が読まれてもわかる文章を意図しています.
●複雑系・自己組織化
私自身は「複雑さの科学」という呼称を好みます.また自分の体系は「情報物理学」と呼んでいます.複雑系というより「複雑さそのもの」を情報学の視点から考えることを重視しています.
「カオスの縁」という有名な概念に関して,「計算万能性」と「デジタル性」という2大問題がありましたが,その両方を私が数学的証明を与えるという方法で解決しました.また「カオス的ネットワークは安定なネットワークより真に能力が高い」という数学的証明を与えました.私はいわゆる全体論ではなく,通常の自然科学的方法である要素還元主義を採用しています.
計算万能性の証明は,私の提案した「基本万能性」(elemental universality)によってです.使った理論は日本で野崎昭弘氏のグループと私などが細々と続けていたもので,世界で研究者が非常に少なかったものです.だれかがあるモデルで必要十分条件を証明すると,後は草1本生えない分野なので,仙人暮らしのような研究者しか手を出しにくいテーマでした.私が1974年1月に発表した研究が重要な意味をもちます.
基本万能性は「非線形性」と「否定(ネガティブフィードバック)の存在」という必要十分条件に還元できます.証明は Kauffman モデルと Wolfram モデルでやっていますが,基本的にどんなモデルでも成り立つとおわかりいただけるでしょう.なお基本万能性の証明にはいくつかのノウハウがありますので,論文を読んだだけではなかなかすべてはわからないかもしれません.
デジタル性の証明は,ごく教科書的なものになりました.だれがやってもこんな証明ではないかと思うのに,だれも証明していなかったようです(すでに証明されていないかをかなり問い合わせました).思うに,複雑系とは難しいテーマだという先入観がありすぎたのではないでしょうか.この証明は学部程度の知識で理解できます.
カオス的ネットワークの能力については,NOT素子をたった1個しか使わずにコンピュータを作るという手品みたいな証明を行っています.この証明も京大の2回生の学生さんが徹底的にチェックして,正しいことを理解できましたので,かなりわかりやすいと思います.
このような証明を行いながら,「生命と知能の進化は同じ原理に従う」という「創発仮説」を提唱しています.その背景には超指数法則と基本万能性があって,後少し証明すると,正式に理論に昇格できると思います.
この理論体系では,基本万能性を「自然法則」とみなします.基本万能性は,自然界において生命や知能が発生した大原理です.コンピュータというのはその原理の一応用例にすぎず,むしろ自然界で果たしている役割の方が重要だという考え方です.
そして「情報物理学」という科学を提唱しました.この言葉は梅棹忠夫先生が使っておられたものです.基本万能性は自然法則としての資格をもっていながら,従来の唯物的物理学の法則からは導くことができません.すべての自然法則を唯物的物理学によって説明できるとしてきたパラダイムが転換して,複雑さの科学の分野において科学革命が起こるかもしれないのです.情報物理学においては,「自然の学」という本来の意味において物理学という言葉を使っています.
いろいろなことがわかってきていますが,人知の成果である数学は,まだ自然には及びもつかないことが,基本万能性の証明からわかります.数学といっても,公理主義的あるいは構造主義的な数学です.どうもこのあたりにもまだ根本問題が潜んでいるようです.
将来的な展開としては,嶋正利先生との「進化コンピュータ」の試作によって,まったく新しいコンピュータを開発し,この理論の知能分野での実証を目指しています.それとともに,カオスの縁のデジタル性の証明において,いわゆるf分の1の法則が厳密に成り立つグラフ理論の定理をみつけたので,その情報物理学への適用なども研究しています.理論的には「システム脳理論」は,すでに哺乳類の脳に近づきつつあると期待しています。
また、マンマシンコラボレーションによって人間の知的能力を向上させる研究にも興味をもっています。数年間にわたって、知的な発想支援ソフトの監修を行ってきました。近々発売になると思いますが、私はビジネス側にはいなくて、そのソフトを小中高校に無料で配ってはどうかという案に賛成しています。
初出:情報処理学会数理モデル化と問題解決研究会(1997年5月,9月,1998年10月),情報処理学会人工生命とその応用シンポジウム(1997年12月)など.
論文:IEICE Trans. Info. & Sys.1998年8月,電子情報通信学会論文誌(A)1998年9月,IPSJ Trans. MPS(採録決定),情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用(採録決定)など.
著書(逢沢明):転換期の情報社会(講談社現代新書,1992年),大不幸ゲーム(光文社カッパ・サイエンス,1995年),複雑系は、いつも複雑(現代書館,1997年),複雑系を超えて(本名共著,筑摩書房,1999年),ITセキュリティソリューション大系
上・下(編著,フジ・テクノシステムズ,2004年)など.
●情報文明学
「情報文明学」は1994年に提唱しました.これも梅棹先生の体系ですので,私はいつも梅棹先生から30年も40年も遅れていて,梅棹先生の天才的な先見性に脱帽しています.私の文明学は「文明のネットワーク史観」というもので,この言葉の使用も「文明の生態史観」を提唱された梅棹先生に許しをお願いしました.私は人と異なることをやりたい主義なのですが,どこまで行っても梅棹先生のてのひらから逃れられないです.同じことは複雑さの問題についてもいえて,カオスの発見者である上田よしすけ先生は私の体系を以前からカバーしておられたと思わざるをえません.
情報文明学の提唱は,複雑系における基本万能性の関与に気づいて,「生命」,生命が生んだ「知能」,人類の知能の所産たる「文明」の進化を一線上のものとして理論化できる根拠をえたことによるものです.すでに「論」ではなく「学」だとみなしました.ただ,当時はまだ複雑系のこのような大胆な理論を発表しても,世の中で受け入れられない恐れがあったので,数理理論は1997年まで発表を待ちました.
文明の研究は,実験のできない学問です.文科系的な方法では,過去の文明の歴史などを研究することによって,さまざまな指摘を行います.ただ,中には後講釈になってしまいがちなものもあって,科学としての妥当性が限定的なものにならざるをえない気がします.
一方,私は理科系的な伝統的方法論で文明学を構築しています.すなわち「少数の法則から文明を説明する」という立場のものです.しかも情報文明を考えようというのですから,未来学の側面をもちます.つまり予測的な文明学にしようとしています.この方法論は情報文明のように変化の速い文明に適用しやすいものです.「法則の妥当性を示すために,あらかじめ予言しておいて,後にその的中度を調べる」という方法も使って,私の文明学における法則の妥当性を示そうとしています.
たとえば,1990年代におけるわが国の情報産業の退潮,バブル経済崩壊などは,超指数法則に基づく「コンピュータの30年周期説」で予測したものでした.この周期説は,その後のマルチメディアと情報ネットワークの興隆も予測するものとなっていて,マルチメディア123兆円構想における2010年という目標年度の設定などにも影響を与えました.
私のネットワーク史観では「ヨコ型ネットワーク」を重視します.タテ型からヨコ型への転換は1991年の夏に出版した『情報新人類の挑戦』(逢沢明,光文社カッパ・サイエンス)で指摘しました.大胆な予言ながら,「大きな組織が細分されていく」という踏み込んだ予測もしました.その年の暮れにはソ連が崩壊し,またその後,わが国で55年体制も崩壊したので,ヨコ型ネットワークと細粒型社会がかなり高い相関性をもつものと思います.91年当時はヨコ型の社会構造を論じること自体に,まだタブーのような雰囲気があったのですが,ソ連の崩壊とインターネットの普及によって一変した感があります.情報文明における変化は非常に速いと思います.
初出(逢沢明):コンピューター社会が崩壊する日(光文社カッパ・サイエンス,1990年),情報新人類の挑戦(光文社カッパ・サイエンス,1991年),情報と戦略(共著,プレジデント社,1994年),20世紀のメディア(共著,ジャストシステム,1996年),ギガソサエティ(ジャストシステム,1996年),ネットワーク思考のすすめ(PHP新書,1997年),情報文化学ハンドブック(共著,森北出版,2001年),情報文明学の構想(共著,以文社,2002年),ゲーム理論トレーニング(かんき出版,2003年)など.
論文:情報文化学会論文誌など.
●コンピュータ関係の教科書
大学初年級向きの教科書を広くお使いいただいています.前2冊はそれぞれ十数刷となりました。稲垣『コンピュータ科学の基礎』(コロナ社,1996年),稲垣『コンピュータ概説』(コロナ社,1997年),理工系のコンピュータ基礎学(コロナ社,2006年),コンピュータ基礎教程(コロナ社,2006年)